2026-10-04
15年間、女性を撮る前に聴いてきたこと。人生の節目に自分に聞きたい10の質問。

一蓮托笑では、これまで延べ100人の女性の話を聴き、その方の笑顔と約330文字の言葉を福岡と東京で展示してきました。今も、2027年の第3回目に向かって日々、想いを聴いています。
でも、人の話をじっくり聴くようになったのは、一蓮托笑を始めてからではありません。
この15年間、私は働く女性を撮る前に、その人の「今」と「これから」について話を聴き続けてきました。
もちろん、話の内容は一人ひとり違います。
仕事のこと。家族のこと。今、考えていること。未来への想い。
そして不思議なのですが、「今」と「これから」の話をしているうちに、自然と「これまで」の話が出てくることがとても多いんです。
「そういえば、こんなことがあって」
「今思えば、あの時」
そんなふうに、今の自分につながっている過去の出来事を、ふと思い出して話してくださる。
振り返ると、撮影に来られる方の中には、何かしら人生の節目や転機にいらっしゃいました。
新しい仕事を始めた。
働き方を変えた。
長く続けてきたことに区切りをつけた。
子育てが一段落した。
50歳を超えた。還暦を迎えた。古希を迎えた。
あるいは、まだ次を決めずに休んでいる。
対話をしていると、聞かれたことで初めて出てくる言葉がある、と感じます。「そういえば…」と、突然思い出したり、何気なく発した言葉に、ご本人自身が少し驚くこともありました。
今とこれからを話していたはずなのに、そこから過去へ戻って、また今へ戻ってくる。私は、そんな時間を15年間、何度もご一緒してきました。
70歳を迎えた節目に、一蓮托笑に参加くださった渡辺さん。
勤めていたJALが破綻した頃の、ご自身の体験が展示の際のキャプションになるかなと相談していた中でのことです。
ふと、対話の中で、JAL破綻の最中ではなく、退職をされた後のある体験について思い出され、「そういえば、この時のこと思い出しました。これが言いたかったのかもしれませんね」と、その思い出と同時に、渡辺さんが大切にしている価値観や想いを言葉にして、キャプションに入れることができました。
(渡辺さんの物語は、↓のオンライン展示からご覧ください)
渡辺 久美子 | 一蓮托笑www.ichirentakusho.jp
話を聴くとき、私は言葉だけを聞いているわけではありません。
ふっと変わった表情や、沈黙。
さっきまで笑っていたのに、一瞬だけ変わった目。
座っている時の手元。
そんなものも含めて、その人を感じてきたように思います。
なぜ、写真を撮る前にそこまで話すのかというと
私の中では、写真はその人そのものを写すというか、、、ただ綺麗にメイクしてポージングして撮るだけ、記録するだけ、という感じにはどうしても思えないんですよね。
もちろん、本人も知らない「本来の自分」を、私が見抜けるなんてそんなことは思っていません。
でも、その人が今どこにいて、何を大切にしていて、どんな時間を通ってきたのか。
そこを少し知ってからカメラの前に立ってもらうのと、何も知らずに撮るのとでは、私自身の見え方が違います。
だから対話を続けてきました。
そして、その対話の中で、15年間聴いてきたことがあります。
この「質問」については、いつもその時、その瞬間に集中し、その人を目の前にして自分の中から出てきた言葉でもあったため、これまで一度も、整理したことがありません。
なかなかまとめられなくて。
ただ、今を生きる昭和世代の女性たち、誰かのお役に立てるのなら、と、今回は、人生の節目で少し立ち止まりたくなったときに、自分一人でも使える形にしてみようと思います。
答えを出すためではありません。
もちろん、これが正論とも思っていません。
今の自分が、どこにいるのか。
そこをちょっと見てみるための10の質問です。
人生の節目に、自分に聞いてみたい10のこと
全部に答えなくて大丈夫です。
気になったものからでいい。
きれいな答えをつくらなくてもいい。
むしろ、「わからない」も、今の自分の答えだと思います。
1.今、私は何をしているだろう。
まずは、今です。
仕事をしている。
新しいことを始めた。
何かを終えた。
休んでいる。
特に何もしていない。
どれでもいい。
そして、もう一つ。
その今を、自分はどう感じていますか。
楽しい。
忙しい。
少し疲れている。
満足している。
何となく違う気がする。
不安もある。
特に何も感じない。
まずは、今いる場所をそのまま見てみます。
2.今の自分を、自分ではどんな人だと思っていますか。また、周りからはどうですか。
「私はこういう人」と、私たちは自分なりのイメージを持っています。
頑張る人。真面目な人。行動する人。人に頼るのが苦手な人。明るい人。慎重な人。
でも、それは周りも同じでしょうか。
私は、こんなこともよく聞きます。
「あなたの周りの人は、あなたのことをなんと言いますか?」
「または、なんと言われたことがありますか?」
家族でも、友人でも、親しいお客様でも。
これまで、どんな言葉をかけられたことがありますか。
「優しいね」「きれいね」「頼りになる」「面白いね」「その服、よく似合ってるね」「一緒にいると癒される」「あなたには、話せる」「かわいいね」「おしゃれね」「素敵」
そんなほめ言葉です。
この質問に対しては案外、すぐには出てこない方もたくさんおられました。
自分で思っている自分を、周りの人はその人の魅力として受け取っているのに、褒められてもその場で流してしまって、あとから思い出しにくくなっているのかもしれない、と感じることがあります。
だから、ここでは、これまで人から言われた言葉を、ただ思い出して並べてみる。
何度も似たようなことを言われているなら、それは、自分では見えていなかった「自分」の一面なのかもしれません。
そして最後に、
自分が思っている自分と、周りから見えている自分。
何か違いや違和感はありますか。
と聞いてみる。
私は、この違いや違和感を感じるお話も、もう少しそこ聴いてみたくなります。
そして「周りは、頼りになるって喜んでくれるけど、実は結構無理してでもがんばっていて、実はしんどい時もあるんです」と話してくださった方もいます。
3.自分の笑顔は好きですか。
これは、私が撮影時によく聞くことがあります。
すぐに「好きです」と答える人もいます。
少し間があく人もいます。
「そうでもないかな」「苦手です」と答える人もいます。
私は、この質問への答えが、その人が今、自分自身をどう見ているかを知る手がかりになることがあります。
だから、答えに迷った人には、無理をさせず、楽しく撮影しながら少しずつ、その人の素敵だなと思う表情を撮って、お見せしていきます。
実際に、「自分の笑顔が好きではない」という人には、理由があることがあります。
私がかつてそうだったので・・・ということも書いていますので、よかったらこちらからお読みください。
「写真が苦手な理由は、写真じゃないことがある。」
https://note.com/ichirentakusho/n/nf39d5977b9d9
だから、その理由を飛び越えて、「あなたの笑顔は素敵ですよ」と何度言っても、届かないこともあると思います。
でも、言葉で何度も伝えるより、一枚の写真を自分の目で見ることで、自分への見方がふっと変わることもあります。
だから私は、撮影した写真を途中で何度もお見せしながら進めることがあります。
とにかく、無理はさせたくない。
笑顔が好きでも、そうでもなくてもいい。
まずは、「私は、自分の笑顔をどう見ているんだろう」と、一度自分に聞いてみる。
この質問は、そこからでいいと思っています。
4.ここまでで、「あの頃の私、よくがんばっていたな」と思う時期はありますか。
仕事を続けていた頃。
子育てで余裕がなかった頃。
病気と闘っていた頃。
家族を支えていた頃。
誰にも言わず、一人で踏ん張っていた頃。
今の自分から見て、「あのときの私、結構がんばってたよね」と思える時期はありませんか。
一蓮托笑は、50歳以上の女性に参加していただいています。
「あのときは本当に必死でした」と話す方に、何度も出会ってきました。
だから撮影後のインタビューで、ときどきこんな質問をします。
「あの頃の自分に、今のあなたから声をかけるとしたら、なんと言いますか?」
すると、「よくがんばったね」「この先も心配しないで」「大丈夫だよ」
といった言葉が返ってくることがあります。
あの頃は、そんな余裕はなかったけど、今の自分なら言える。
だからもし、ここまで読んで、頑張っていた頃の自分が浮かんだなら。
「よくがんばってたよね」と、まずは自分に言葉をかけてあげてもいいんじゃないかなと思います。
5.その頃、何に葛藤していましたか。
頑張っていた時期には、表からは見えなかったものもあったと思います。
こうしたかったけれど、できなかった。
こうあるべきだと思っていた。
他者の評価で動いていた。
いつも自分は後回しにしていた。
本当は嫌だった。辛かった。
どうしていいのかわからなかった。
そのときの葛藤を、今ならどんな言葉で話せるでしょうか。
ここでは、誰かを悪者にしたり、自分を責めなくてもいい。
ただ、「あの頃、私は葛藤していた」と見てみるだけです。
一蓮托笑では、かつて葛藤した出来事をお話いただいています。
よかったら↓からご覧ください。
https://www.ichirentakusho.jp/
6.葛藤の時期から、気づいたことや学んだことはありますか。
すべての経験から何かを学ばなければいけない、とは思いません。
「何もない」でもいい。
何年も経ってから「あの時は・・・」と気づくこともあります。
それでも振り返ると、
もうあんな無理はしない。
人に頼ってもいいと思えるようになった。
これは自分にとって大切だった。
これはもう要らないと思った。
感謝が生まれた。
そんな気づきや学びを受け取ることがあります。
私自身は、39歳で目の病気をした後、何年も経ってから、ようやくその時のことが言葉にできました。50歳で離婚した時もなかなかしんどかったけれど、今では感謝に変わっています。
少なくとも私自身は、気づきが何年も後から言葉になりました。
青木みどりさんは、お母様が亡くなられた後、自分が愛されていることを深く実感して、それまでの霧が晴れたようになった、とお話くださいました。
青木 みどり | 一蓮托笑www.ichirentakusho.jp
7.もう、頑張らなくてもいい、手放していいと思うことはありますか。
私たちは「これから何をするか」はよく考えます。
でも、「もう、やらなくてもいいことは何だろう」も、同じくらい大切なのではないかと思っています。
昔は必要だった。
でも、今はもう違う。
誰かにどう見られるかを気にすることかもしれない。
全部自分でやることかもしれない。
何か一つでも、「これは、もういいかな」と思えるものはありますか。
私は、年齢を重ねたこともあるかもしれませんが、とにかく無理をしないこと。がんばりすぎないこと。
違和感を超えて、がんばることはもうやめました。私は、最初の小さな違和感を無視しないようにしています(私の学びです)。
8.これからも、大切にしたいことは何ですか。
何かを変えることばかり考えなくてもいいと思います。
このまま大切にしたいものもある。
仕事。家族。友人。一人の時間。
好きなことや自分の心地よさ。
「これは変えたくない」と思えるものを知ることも、自分を知ることの一つです。
9.あなたが心が動く瞬間は、どんなときですか。
私は、これはとても大切な問いだと思っています。
美しいものを見たとき。
誰かの話を聞いたとき。
仕事をしているとき。
「好きだな」「いいな」「やってみたいな」
そんなふうに、心がふっと明るく動く瞬間があります。
でも、心が動くのは、嬉しいときだけではないんですよね。
なぜかザワザワしたとき。
誰かを見て、羨ましいと思ったとき。
その瞬間、自分を少し下に置いて見ていたことに気づくこともあります。
悲しくなったとき。
腹が立ったとき。
妙に気になったとき。
そういう反応も、「心が動いた」ということだと思います。
だから、ここでは無理にきれいにまとめなくていい。
嬉しかった。羨ましかった。ザワザワした。悲しかった。
なぜかわからないけれど気になった。
まずは、そのまま机の上に出してみる。
「こんなふうに思うなんて嫌だな」と片づけずに、「私は、ここで心が動いたんだな」と、一度見てみる。
そこに、今の自分が大切にしていることや、引っかかっていることが、少し見えることがあるように思います。
10.ここから先、描いていることはありますか。
「目標は何ですか?」と聞かれると、なんだか大きなことじゃなくちゃいけないのかもしれない、と少し構えてしまう人もいます。
だから私は、「ここから先、何か描いていることはありますか」くらいがいいと思っています。
仕事を続けたい。
仕事を変えたい。
働き方を変えたい。
夫婦でこんなふうに過ごしたい。
行ってみたい場所がある。
やってみたいことがある。
何も決めず、しばらくゆっくりしたい。
それも全部、「これから」です。
今、何も描いていなくても大丈夫だけど、もし何か浮かんだなら、それを一度言葉にしてみる。
そこから小さく動き出すこともあります。
答えを出すより、自分の言葉を自分で聞く。
ここまで10の質問としてまとめましたが、実際の撮影で、毎回この10個を順番に聞いているわけではありません。
目の前の人によって、話すことは毎回違います。
一つの言葉から思いがけない話につながることもあれば、もっと違う質問をすることもあります。逆に、聞かなくても自然に出てくる話もあります。
話してくれたことを聞きながら、その場で私の中に浮かんだことを聞いていくという感じで、対話しています。
だから今回の10の質問も、15年間の対話を振り返りながら、「よく聞いてきたことって、何だろう」と、初めてなんとか言葉にしてみたものです。
これが正解でもないし、この10個に答えたから人生が変わるわけでもありません。全部が整理されるわけでもない。
ただ、15年間女性たちの話を聴いてきて、自分で話した言葉を、自分で聞く時間には意味があると感じています。
「あ、私、そんなふうに思ってたんだ」
「そういえば、これが好きだった」
「私、結構がんばってきたんだな」
そんな言葉が、ぽろっと出ることがあります。
私は、コーチでもカウンセラーでもありません。
何かを解決できるとも思っていません。
もちろん、何が正しいかを判断する立場でもありません。
ただ、その人の言葉や、そのときの表情、間、まとっている空気を感じながらシャッターを切り、今を生きているその人の姿を撮って、写真で役に立ちたい。その想いで15年間続けていることです。
一人で考えるより、誰かに話してみたくなったら
私は、聞かれて初めて出てくる言葉がある、と感じています。
話しているうちに、「そういえば……」と思い出したり、自分の口から出た言葉を聞いて、「私、そんなふうに思っていたんだ」と気づくことも。
もし、この10の質問をきっかけに、
一人で考えるだけではなく、誰かに話しながら「今の自分」を少し見てみたいと思われたら、個別でお話を聴く時間もつくっています。
無理に答えを出す時間ではありません。
今あることを、話せるところから。
▶︎ 【清水貴子の個別セッションについて】以下をご覧ください。
写真家・清水貴子
15年間、働く女性を中心に撮影。現在は50代・60代・70代を中心に、人生の節目を迎えた女性の話を聴き、これまで生きてきた時間と「今」を写真と物語にしています。
50歳以上の女性の写真展「一蓮托笑」主宰。

